当店は、江戸前の蒲焼。
活きているうなぎを捌き、串を打ち、焼きます。
それから適度に蒸し、最後にタレをつけて、もう一度 炭火で焼きます。
うなぎ職人の間では、よく「串打ち三年、裂き八年、焼きは一生」と言われます。
一人前になるための道のりは簡単ではありません。
焼きなどは、一生をかけて身に付けるほど難しいということなのでしょう。
きちんと焼くには、きちんとした白焼きが。
きちんとした白焼きをするには、きちんとした串うちが。
きちんと串うちをするには、きちんと鰻を裂くことが。
そして、きちんと鰻を裂くには…と、焼きに至るまでの どの工程もしくじることは出来ません。
焼きは一生 と言うのには、その前までの全工程も含まれているのでは?
そんなことを考えていると、「まず はじめに心構えなのだ」と身の引き締まる思いです。
「今日もちょうど良く」
言葉だけにならないように、 しっかりと。
当店のうなぎは全て国産です。
うなぎは生きたまま捌くので、それまで元気に生かしておくのが大切です。
うなぎは仕入れてから捌くまでの少しの間、佐助稲荷の霊狐泉を源泉とする湧水に打たせています。
何段にも積み上げたうなぎの桶には、小さな穴がいくつも開いていて、少しずつ下の桶へと水が落ちていく仕組み。
これによってうなぎは鮮度を保つことが出来ます。
うなぎ屋なら火事が起きた時に何は無くとも持って出る、なんて言われてますね。
そんな大切なうなぎのタレ。
うなぎ屋は、創業当時からタレを注ぎ足し注ぎ足して使います。
よく「このタレは100年もので、、、」という話を聞きますが、実際には数ヶ月もすれば、ほとんど中身は入れ替わってしまいます。
はじまりのタレと今のタレ。
理論上は全くの別物ということになりますね。
でも、タレが毎日少しずつ新しいものに入れ替わっていったとしても、精魂を込めてタレを作った職人たちの気持ちは開業当時から甕の中にずっと残っています。
このタレをくぐらずにお客さまのところに届いた蒲焼は一枚もありません。
一日一日を見続けて来た大切な記憶がそこにあるのです。
米は、新潟・魚沼産のコシヒカリ。
中でも元祖と言われる入広瀬の米を使用しています。
入広瀬は、標高200〜300メートルの山間部にあり、冬は3メートルを超える雪が積もる豪雪地帯です。
田んぼには、周囲の山々の雪解け水が注ぎ込んでいます。
夏の昼夜の寒暖差が大きい事で糖熟が進んで、お米の甘みや旨みがたっぷりになるそうです。
収穫されたお米は「雪室」と呼ばれる雪で作った天然の冷蔵庫で1年を通して5℃以下で保管されているのでいつでも新鮮。
難しい事は抜きにして実際食べてみると、納得のおいしさです。
当店のうなぎは備長炭で焼き上げます。
炭火でうなぎを焼くと、蒲焼の表面のタンパク質が遠赤外線による高温ですばやく焼き固められ、脂が中に閉じ込められます。
その熱が芯までほどよく伝わり、
外側はパリッと焼き目がついて芳ばしく、中は旨味を閉じ込めてフワッと焼き上がります。