
今日もちょうど良く。
当店は、江戸前の蒲焼。
活きているうなぎを捌き、串を打ち、焼きます。それから適度に蒸し、最後にタレをつけて、もう一度 炭火で焼きます。
「串打ち三年、裂き八年、焼きは一生」と言われますが、「蒸し○年」を入れているお店もあるほど。蒸す行程もとっても大切です。そして、一生と言われる「焼き」焼きは、一生をかけて身に付けるほど難しいということなのでしょう。
きちんと焼くには、きちんとした白焼きが。きちんとした白焼きをするには、きちんとした串うちが。きちんと串うちをするには、きちんと鰻を裂くことが。
そして、きちんと鰻を裂くには…と、焼きに至るまでの どの工程もしくじることは出来ません。
焼きは一生 と言うのには、その前までの全工程も含まれているのでは?
そんなことを考えていると、「まず はじめに心構えなのだ」と身の引き締まる思いです。
「今日もちょうど良く」言葉だけにならないように、 しっかりと。


うなぎについて
うなぎは仕入れてから捌くまでの間、井戸から吸い上げた井戸水を使って生かしておきます。
普通の水でも大丈夫ですが、井戸水は外の気温の影響を受けにくく、うなぎのストレスがより少ない環境を保つことができます。
井戸水は一年中、14〜16℃くらい。夏は冷たく、冬は温かく感じます。
小さな穴がいくつか空いているうなぎ専用の桶にうなぎを入れて積み重ね、ポンプで吸い上げた井戸水を打たせると、適度に下の桶へと水が落ちてゆくようになっています。
いけすのようなものに入っているわけではなく、うなぎの桶を使って、うなぎにずっと冷たく新鮮な水を供給するって寸法です。

たれ
うなぎ屋なら火事が起きた時に何は無くとも持って出る、なんて言われてますね。
そんな大切なうなぎのタレ。 創業当時から注ぎ足し注ぎ足したものを先代から譲り受けるところから、その店の魂のように扱われるのだと思います。
でも実際には、数ヶ月もすれば、ほとんど中身は入れ替わります。
40年前のタレと今のタレ。理論上、全くの別物ということになりますね。開業当時、大きな期待と少しの不安を抱いて作ったタレは、どんなに新しいものに入れ替わっていっても、甕の中で0%になりはしないでしょう。

何かしらの何か
老舗でなくとも、タレはずっとその店の、一日、一日を見続けています。 このタレをくぐらずにお客さんのところに届いた蒲焼は一枚も有りません。
こんな、数字で表せないところに、『何かしらの何か』がありそうな気がしてきませんか?そういうもの全部をあわせて、少し大袈裟だけれど『秘伝のタレ』なんて呼ぶ人がいるのかもしれません。
材料を入れたり、火の加減をしたり美味しく作るコツは、タイミング。煮過ぎず、煮なさ過ぎず、ちょうど良い加減で。
▲ top米
米は、標高200〜300メートルの山間部に位置する入広瀬(いりひろせ)地区の魚沼産コシヒカリ。冬は3メートルを超える雪が積もる豪雪地帯です。
田んぼの水は、周囲の山々の雪解け水が清流となり注ぎ込まれているんだとか!
夏の昼夜の寒暖差が大きい事で糖熟が進んで、お米の甘みや旨みがたっぷりになるそうですよ。
収穫されたお米は「雪室」と呼ばれる雪で作った天然の冷蔵庫で1年を通して5℃以下で保管されているのでいつでも新鮮。
難しい事は抜きにして実際食べてみると、納得です。

炭
当店の炭は紀州備長炭。
炭火を使う料理店では、ひっぱりだこの紀州備長炭。どういった特徴があるかご存知でしょうか?
- ・煙がほとんど無く、余計な臭いが少ない。
- ・赤外線量が多く、焦げずにこんがり焼ける。
- ・火力が安定していて、調節しやすい。
メリットしか思い当たりませんが、人気の理由は、とにもかくにも「おいしく焼ける」ところです。
それは紀州備長炭の炭素密度が高い=空洞になっている部分が少なくギュっと詰まっているから。とっても堅いのです。その証拠に叩くといい音が響きますよ。
蒲焼を焼く時、炭は赤く燃え盛った状態ではなく、 炭のまわりを灰が覆っている状態にします。灰がラジエーターのような役割をして、温度が安定した炭火になるんですね。炭は消えているように見えていても かなりの温度なんです。

外はパリッ、中はフワッ
安定した炭火を作ってうなぎを焼くと蒲焼の表面のタンパク質が遠赤外線の高温で焼き固められ、脂が中に閉じ込められます。その熱がほどよく中に伝わり、外側はパリッと焼き目がついて香ばしく、中に旨味を閉じ込めてフワッと焼き上がるんです。
炭火の実力ってすごい。
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